筋力トレーニングに興味・関心がある方や、トレーナーを目指している方は、一度は「ベンチプレス」というトレーニング手法を見聞きした経験があるでしょう。また、実際にジムなどで、機材に触れた経験がある方もいるかもしれません。
しかし、「名前は知っているものの、具体的な方法やポイントが分からない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ベンチプレスを実施する際のポイントや注意点、トレーナーとして指導する場合保有を検討したい資格もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ベンチプレスの基本情報
ベンチプレスとは、専用の器具(ベンチとバーベル)を使用して上半身を効率的に鍛える筋力トレーニング方法です。ジムなどでベンチプレスをおこなっている人を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
具体的には、大胸筋(胸部にある平たく大きな筋肉)や三角筋(肩の筋肉)、上腕三頭筋(上腕でもっとも体積が大きい筋肉)を鍛えられます。
ベンチプレスは生涯スポーツに適している
ベンチプレスは筋力トレーニングの手法であると同時に、スポーツとして記録を競い合う方も多く、大会も実施されています。
選手寿命が長い傾向にあり、40代で日本記録を保持している選手や70代で現役を続けている選手もいます。ベンチプレスは若年層だけではなく、中高年層も挑戦できるトレーニング方法です。
ベンチプレスはパワーリフティング競技の一種目でもある
ベンチプレスは、パワーリフティング競技の一種目でもあります。パワーリフティング競技とは、スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの合計挙上重量を競うスポーツです。
また、ベンチプレスは下肢に障害がある方でも取り組めるスポーツです。パラリンピックでは、「パワーリフティング(Powerlifting)」という名称で、ベンチプレスが正式競技として実施されています。
ベンチプレスのトレーニングに関するポイント
以下は、ベンチプレスのトレーニングに関するポイントです。トレーナーとして働く方がお客さまへ指導する際や、ご自身がトレーニングする際に役立つので、参考にしてください。
- ラックの高さを調整する
- セーフティーバーを適切な位置に設置する
- ベンチに身体の5点を接地させる
- 背骨を反り胸を張ってアーチを作る
- バストトップからみぞおちあたりの位置にバーをおろす
- 反復可能最大重量(Repetition Maximum)を考慮して負荷を決める
それぞれに関して詳しく説明します。
ラックの高さを調整する
プレートを取り付ける前に、バーを置くラックの高さを調整しましょう。ベンチに寝た状態で、以下の2点を確認します。
- バーの位置:アゴから目線あたりに収まるように設置する
- バーの高さ:バーを握った状態で、肘が軽く曲がる程度に設置する
セーフティーバーを適切な位置に設置する
ベンチプレス中の思わぬ事故を回避するために活躍するのが、セーフティーバーです。身体がバーベルに潰されないよう、適切な位置に設置しましょう。
セーフティーバーの位置が高過ぎる場合、バーベルの可動域が狭まって筋肉に刺激を与えられず、トレーニングの効果が低下する可能性があります。一方、設置位置が低過ぎる場合では、身体が保護されず負傷につながる懸念があります。
なお、セーフティーバーを設置せずにトレーニングをおこない、事故が発生するケースは多く存在するため注意が必要です。実際にトレーニングをおこなう前に、バーベルが上がらない状態でも首をはじめとする身体が保護されるか、忘れずにチェックしてください。
ベンチに身体の5点を接地させる
ベンチプレスを実施する際には、身体の5点(後頭部・肩甲骨・臀部・右足・左足)がベンチに接地していることをご確認ください。
上記5点がベンチに接することで、高重量のバーベルをコントロールするための安定的な土台が構築されます。
背骨を反り胸を張ってアーチを作る
ベンチに仰向けになった状態で肩甲骨と臀部の2点を接地したまま、可能な限り胸を張って背骨を反ることで、アーチ(ブリッジ)を作りましょう。
アーチを組んだ状態で胸の筋肉にストレッチがかかると、筋肉の発達につながります。また、アーチを高く組み、肩甲骨を下げる意識を持つと肩甲骨が自然と寄り、肩の前面部分の負傷を防ぎやすくなります。
バストトップからみぞおちあたりの位置にバーをおろす
バーをおろす位置の目安は、バストトップからみぞおちあたりです。上腕の長さによって位置は変わるため、トレーニング開始前にご自身に適した位置を見極めましょう。
なお、バーは、弧を描くような軌道でゆっくりと動かすことが基本です。
反復可能最大重量(Repetition Maximum)を考慮して負荷を決める
持ち上げる負荷は、「反復可能最大重量(Repetition Maximum)」を考慮して決めましょう。
これはRMという単位で示され、1RMは1回だけ持ち上げられる最大重量を意味します。つまり、5RMは5回持ち上げることが限界の負荷であり、同様に10RMや20RMは、10回または20回持ち上げることが限界の負荷となります。
筋力の向上を目的とする場合は1~5RM、筋肥大を目的とする場合は10~20RMがおすすめです。
ベンチプレスのアレンジメニュー
ベンチプレスの基本は、床と平行なベンチを使用する「フラットバーベルベンチプレス」です。フラットバーベルベンチプレスでは、高重量を扱うことが可能で、胸筋全体を鍛えられます。
ただし、人によっては「胸筋上部への刺激がやや少ない」と感じるケースがあるかもしれません。その場合は、以下に示すアレンジメニューをお試しください。
2種類のアレンジメニューに関して詳しく説明します。
インクラインベンチプレス
インクラインベンチプレスとは、傾斜をつけて頭を高くした状態で実施するベンチプレスです。大胸筋上部などを効果的に鍛えられます。
肩に負荷がかかり過ぎないように、肩甲骨を寄せて実施しましょう。重量は、フラットバーベルベンチプレスよりも軽く設定してください。
デクラインベンチプレス
デクラインベンチプレスとは、傾斜をつけて頭を低くした状態で実施するベンチプレスで、大胸筋下部などを効果的に鍛えられます。
脇を開き過ぎず、肩がすくまないように注意し、床面と垂直の方向にバーベルを上げることを心がけてください。傾斜しているベンチと垂直の方向ではありません。
また、頭に血がのぼりやすいため、1セットごとに立ち上がりましょう。
ベンチプレスのトレーニングを実施する際に注意するポイント
ベンチプレスのトレーニングを実施する際は、ご自身やクライアントの安全を確保するために、以下の点に注意しましょう。
- ラックに戻すまで油断しない
- 無理をせず適切な負荷でベンチプレスを実施する
それぞれに関して詳しく説明します。
ラックに戻すまで油断しない
目標回数まで達したタイミングで、バーを持った状態のまま安心してリラックスする方もいるでしょう。
しかし、バーをラックに戻すまでは、絶対に油断してはいけません。事故を防止するためには、丁寧にバーをラックに戻す習慣を身につけることが大切です。
また、補助者による監視も重要です。トレーナーとして指導する際は、クライアントがバーをラックに戻すまで動作のチェックを継続しましょう。
無理をせず適切な負荷でベンチプレスを実施する
筋力測定を実施し、トレーニングを実施するクライアント、または、ご自身の体力・筋力に適した負荷を把握してください。テストを実施する環境がない場合は、少しずつ負荷を上げながら調整しましょう。
いきなり高い負荷をかけると、フォームが崩れて転倒などの事故につながりかねません。無理をせずに、適切な負荷でベンチプレスを実施してください。
トレーナー育成スクールに通えば、正しい実施方法を習得できる
ここまでベンチプレスの基本情報から注意点まで説明してきましたが、文字だけではベンチプレスの実施方法をイメージしにくい方もいるでしょう。その場合は、トレーナー育成スクールに通うのも選択肢のひとつです。
トレーナー育成スクールによっては、正しいベンチプレスの実施方法を習得できます。トレーナーとして活動している方はもちろん、今後トレーナーとして活動したい方にとっても有益な学びとなるでしょう。
また、スクールによっては資格取得をサポートしてくれる場合もあり、資格取得の過程では、トレーニングに関する幅広い知識を習得できます。
なお、スクールごとに学習プログラムや費用が異なるため、内容を比較してご自身に適したスクールを選ぶことが大切です。
トレーナー育成スクールで取得できる資格の例
下表に、トレーナー育成スクールで取得に向けたサポートを受けられる資格の例をまとめました。スクールごとにサポート対象の資格は異なるため、詳細は受講を検討しているスクールの最新情報を確認しましょう。
資格の名称 |
概要 |
NSCA-CPT |
- NSCA(National Strength and Conditioning Association、全米ストレングス&コンディショニング協会)が認定するトレーナー資格
- NCCA(The National Commission for Certifying Agencies、全米資格認定委員会)によって認定されている
- 健康と体力に関し、評価・動機づけ・教育・トレーニング・コンディショニング全般の指導を実施するための専門的能力を有することを客観的に証明可能
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NASM-CPT |
- NASM(National Academy of Sports Medicine、全米スポーツ医学協会)が認定するトレーナー資格で、NCCAによって米国内で最高水準にランクされている
- 科学的原理に基づいてクライアントにトレーニングプログラムを提供する能力があることを客観的に証明可能
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NESTA-PFT |
- NESTA(National Exercise & Sports Trainers Association、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)が認定するパーソナルフィットネストレーナー資格
- 日本支部の「NESTAジャパン」を立ち上げ、日本人向けにプログラム・試験を提供・実施している(取得した資格は、日本国内だけではなく、国際的に通用する)
- 身体に関する専門知識・技術、ビジネススキルがあることや、科学的根拠にもとづいてプログラムを作成可能であることを客観的に証明可能
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まとめ
ベンチプレスを実施すると、上半身を効率的に鍛えることが可能です。ただし、重いバーベルを扱うため、ラックに戻すまで油断してはいけません。文字情報だけでは実施方法を理解しにくい場合は、トレーナー向けスクールに通うことも選択肢としてご検討ください。
スクールによっては、資格取得のサポートをおこなっている場合もあります。トレーナーを目指している方が資格を取得すると、トレーニングに関する知識・スキルがあることを客観的に証明でき、集客に役立つでしょう。
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